【プラントベースフードの需要の高まり】第3のミルク、オーツ麦とは?
近頃、『プラントベースフード』の需要が伸びているそうです。
野菜・果物・豆類・穀類・キノコ類など、「動物性の原料を使用せず、植物由来(プラントベース)の原料で作った食べ物」を指します。
大手ハンバーガーチェーンでは、パテを肉の代わりにプラントベースにしたり、大手コーヒーチェーンでも、カフェラテに使用する牛乳を豆乳やオーツ麦などにしたプラントベースのメニューが登場するなどの動きがあります。
今回のコラムでは、特に欧米で「第3のミルク」の原料として消費量が多く、日本でも注目度が高まっている「オーツ麦」について紹介します。
第3のミルク、オーツ麦とは?
オーツ麦は、イネ科カラスムギ属の穀物です。小麦や大麦とも違う種類で、エン麦(えんばく)やカラス麦とも呼ばれています。
・ライムギ属…ライ麦はドイツの黒パンの原料。
・カラスムギ属野生種…カラス麦。カラス麦の栽培種がエン麦(オーツ麦)。
「エン麦」は漢字で書くと「燕麦」。英語名が「Oat」なので、「オーツ麦」(またはオート麦)とも呼ばれます。また、「エン麦」は栽培種ですが、その野生種が「カラス麦」と、正確に言えば種類が違いますが、ほとんど同じように扱われています。
オーツ麦とオートミールの違いはなに?
オーツ麦よりもオートミールのほうが馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
オーツ麦とオートミール、何か違うのでしょうか。
オートミールは、オーツ麦を脱穀して食べやすく調理しやすくしたものです。オートミールは英語で「oat meal」。つまり、「オーツ麦の食事」ということです。オーツ麦は昔は家畜のエサとして利用されていましたが、プレスしてフレークにする技術が開発されてからは、オートミールとして広く食べられるようになりました。グラノーラやミューズリーなどに入っているので実は食べていた、という方もいるかもしれないですね。
オートミールとオーツミルクの違いはなに?
オーツ麦やオートミールのすばらしいところをもっと手軽にいただけるのが、“オーツミルク”です。オーツミルクは、オーツ麦と水を混ぜたものを濾して作られた『植物性ミルク』のことです。
最近は『植物性ミルク』と言われる、豆やナッツ、穀物など植物性の材料から作られるミルクの種類が増えています。身近なものでは、豆乳があります。スーパーやコンビニなどで手軽に買うことができ、日本ではもっともポピュラーなものではないでしょうか。
他に、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、カシューナッツミルクなどがありますが、牛乳・豆乳に続く第3のミルクとして最近注目されているのが、「オーツミルク」です。
オーツミルクは、簡単に手作りもできます。オートミールを一晩水に浸し、それをミキサーなどで攪拌、手ぬぐいなどで濾せば完成。このように、市販品でも単にオートミールと水を混ぜ濾したものもあれば、オート麦に酵素を利用し、糖化させているものもあります。糖化とは、お米から甘酒ができるように、じっくりと原料の甘味を引き出していきます。また、濾してしまうと残ったカスの方の栄養が取れませんが、糖化は、原料そのものを液体化していくので、栄養もしっかり残っています。
オートミールを濾しただけのものか、糖化させたものなのかで含まれている栄養が全く異なりますので、市販で購入する際はどのように作られているのかもしっかりチェックしていきたいですね。
オーツ麦の栄養は?
オーツ麦は高い栄養価を持っています。特にβグルカンを主体とした食物繊維やミネラルを豊富に含んでいます。
オーツ麦には、食物繊維が玄米の3倍以上、白米の20倍近く含まれています。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の理想のバランス1:2の割合で含まれており、腸内環境改善にうってつけ。中でも水溶性食物繊維のβグルカンは、お腹の中でゲル状になって消化器官をゆっくり移動し、糖質やコレステロールを包み込むように吸着して、対外に出す働きがあります。腸内環境の改善やコレステロール値の改善など、生活習慣病の予防などが期待されています。
また、オーツ麦には、玄米の約2倍、白米の約5倍の鉄が含まれています。
鉄は、血液中のヘモグロビンの一部となって全身に酸素を運ぶという重要な働きを持っており、不足すると鉄欠乏性貧血による疲れ・だるさ・頭痛・眠気などの症状に繋がります。
また酸素を運ぶだけでなく、酸素を利用したエネルギーの代謝サイクル、呼吸・DNAの合成と修復・異物の代謝など、細胞内でのエネルギー代謝にも関わっています。
特に酸素は脳のエネルギーとなるブドウ糖を代謝するのに必要なため、酸素の供給が不足すると脳が正常に働きにくくなり、めまいや頭痛、眠気といった症状が現れてしまいます。
さらに、オーツ麦には玄米の5倍、白米の10倍近くのカルシウムが含まれています。
カルシウムは、骨や歯の形成に大きく関わる人体に必須のミネラルのひとつです。体重の1~2%の量(成人でおよそ1kg)が体内に存在していて、人間の身体にもっとも多く含まれるミネラルでもあります。
十分なカルシウムの摂取は、骨量を維持することに繋がるとともに、骨粗しょう症やそれを原因とする骨折の予防につながります。
まとめ
栄養価が高く、食物繊維など健康にいい栄養素が豊富に含まれているオーツ麦。排便を促し、美容やダイエットにもいいとされています。乳糖不耐症やアレルギーを持っている方にも嬉しい飲み物です。また、それ以外にも、「環境に優しい」という非常に大きなメリットがあります。
コップ1杯のミルクを生産するのに、牛乳の場合は650平方メートルの土地(テニスコート2面分)が必要になるのに対して、オーツミルクの場合はその10分の1の土地で抑えられると言われています。また、牛乳を生産するためには、広大な土地が必要となるだけではなく、牛に水を飲ませて、エサを食べさせて、搾乳するという工程があります。
牛乳を製造する工程を、オーツミルクを作る農業に置き替えたら、多くの土地や資源を節約できます。
様々な面で牛乳よりもサスティナブルなオーツミルク。持続可能な社会に向けて取り組みが一層広がっている昨今にぴったりの飲み物ですね。ぜひ利用してみはいかがでしょうか。
著者プロフィール
椙山女学園大学卒業後、食品原料商社にて様々な食品原料の開発に携わる。現在は、フリーランス管理栄養士として年間500人以上に栄養指導、食品添加物セミナー、企業のコラムなどを執筆。また、マクロビ・薬膳・自然療法・望診を学び、西洋・東洋の面から見た、病気にならない体づくりを研究中。
《保有資格》
管理栄養士 / 管理薬膳師 / 上級望診指導士