春から初夏へ 〜揺らぎやすい季節を薬膳で整える〜
春から初夏にかけてのこの時期、「なんだか体がだるい」「気分がすっきりしない」と感じる方が多くなります。
実はこの季節は、心と体がとても揺らぎやすい時期。薬膳の視点を交えて、その理由と対策を見ていきましょう。
季節の変わり目が、心身を揺らす
まずは、気温と湿度の変化。春は日によって寒暖差が大きく、初夏になると一気に蒸し暑くなることもあります。体は気温や湿度に合わせて働きを調整していますが、急激な変化にはなかなかついていけず、自律神経のバランスが崩れやすくなります。 また、春は卒業・入学・就職・異動など、環境の変化も多い季節。緊張や不安、新しい人間関係など、知らず知らずのうちに心にもストレスがかかっています。気づいたときには「疲れが取れない」「食欲がない」「寝つきが悪い」といった不調となって現れてくるのです。
薬膳の視点で見る「春〜初夏の揺らぎ」
薬膳では、春は「肝(かん)」の働きが活発になる季節と考えます。肝は、気や血の流れをスムーズにし、感情のバランスを整える役割を担っています。ところが、肝の働きが乱れると「イライラする」「ため息が増える」「頭が重い」といった不調が現れやすくなります。肝はストレスに弱く、現代の春の生活はまさに肝を疲れさせやすい時期だといえるでしょう。
一方、初夏は「心(しん)」に注意が必要な時期です。心は血をめぐらせ、精神を安定させる働きがありますが、暑さや湿気の影響を受けやすく、心が弱ると「不眠」「動悸」「焦燥感」といった症状が現れやすくなります。特に梅雨の時期に向けては、体に余分な水分(湿邪)が溜まりやすく、だるさやむくみ、食欲不振を引き起こします。
薬膳的おすすめ食材と調理法
この時期を元気に乗り切るために、どんな食材を選べばよいのでしょうか?
〈春におすすめの食材〉
・菜の花、春菊、セロリ、ミントなど、香りのある野菜(気の巡りを良くする)
・たけのこ、ふき、山菜など(体の中の不要なものをデトックス)
・新玉ねぎ、にら、にんにくの芽(肝の働きを助け、血の巡りを整える)
〈初夏におすすめの食材〉
・そら豆、きゅうり、トマト、苦瓜(体の余分な熱や湿を取り除く)
・さくらんぼ、ライチ、レモンなど(心を潤し、リフレッシュさせる)
・緑茶、ハトムギ茶(体内の湿を排出し、巡りを良くする)
調理法としては、春は「蒸す」「煮る」などがおすすめ。じんわり火を通り、食材が柔らかくなって消化しやすくなります。「焼く」や「揚げる」調理方法は油を使うので体に負担がかかるので、この時期にはあまりおすすめしません。生野菜よりも、少し火を入れた料理の方が吸収が良く、体を冷やしすぎる心配もありません。
食べ方ひとつで、体は変わる
薬膳と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実は「旬の食材を意識すること」そのものが立派な薬膳の第一歩です。その季節に育つ食べものは、私たちの体が必要としている栄養を自然と含んでいます。春は気を巡らせて軽やかに、初夏は余分な湿や熱を抜いてスッキリと。そんな視点で食材を選ぶだけでも、季節に寄り添った食事になります。
変化の多い春から初夏。心と体が揺らぎやすい時期だからこそ、食事でやさしく整えていきたいですね。

著者プロフィール
椙山女学園大学卒業後、食品原料商社にて様々な食品原料の開発に携わる。現在は、フリーランス管理栄養士として年間500人以上に栄養指導、食品添加物セミナー、企業のコラムなどを執筆。また、マクロビ・薬膳・自然療法・望診を学び、西洋・東洋の面から見た、病気にならない体づくりを研究中。
《保有資格》
管理栄養士 / 管理薬膳師 / 上級望診指導士